帰りの新幹線、僕が座るはずの席にひと組の親子が寝ていた。父親のほうがすぐ気付いてくれてすいませんと言って横で眠っている子供を自分のひざに乗せ席を空けてくれた。なんとなく気まずい雰囲気のまま新幹線は走り出した。日曜の昼、指定席の車両はガラガラだ。子供を抱えて眠る父親を横目に、べつにこの席じゃなくても他の開いている席に座った方が良かったなと思いつつなかなか改めて席を譲るタイミングがつかめず名古屋に着いた。名古屋でも乗車してくる人は少なかったので、誰もいないから3人掛けの方に移ると言って席を変わった。父親はありがとうございますと言った。ちょうど子供も目を覚まし、二人は楽しそうにいろいろ話をしていた。僕はウォークマンを聞きながら本を読んだ。
新横浜に着いたとき、ふと横を見ると親子の姿は無かった。ホームの向こうのほうを見ると仲良く手をつないで歩いている二人が見えた。
